X3D CPUは動画編集が遅い?通常版Ryzenとの違いを解説

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最終更新日:2026年8月4日

Ryzenの「X3D」シリーズは、ゲーム性能が高いCPUとして人気があります。一方で、動画編集用のパソコンを探していると「X3Dは動画編集が遅い」「クリエイティブ用途には向いていない」という意見を目にすることがあります。

現行世代のX3D CPUは、動画編集が極端に遅いわけではありません

特にRyzen 9000シリーズでは、X3Dによる動作クロックの低下が抑えられており、Ryzen 9 9950X3Dのように、通常版を上回る動画編集性能を示すモデルもあります。

ただし、Ryzen 7 9800X3Dのような8コアモデルは、同価格帯の12コアCPUと比べると動画編集性能で不利になることがあります。動画編集を主目的にする場合は、X3Dの有無よりも、コア数・GPU・使用する動画形式を優先して選ぶことが重要です。

X3D CPUは動画編集が遅いのか

X3D CPUの動画編集性能は、次のように考えると分かりやすくなります。

比較するCPUコア/スレッド最大クロックL3キャッシュTDP動画編集性能の傾向適した用途
Ryzen 7 9800X3D8/165.2GHz96MB120W9700Xより高性能だが、12コアの9900Xには及ばないゲーム中心+動画編集
Ryzen 7 9700X8/165.5GHz32MB65W9800X3Dよりやや低いが、安価・低消費電力軽~中程度の動画編集
Ryzen 9 9900X3D12/245.5GHz128MB120WPremiere Proでは9900Xとほぼ同等ゲームと本格的な動画編集
Ryzen 9 9900X12/245.6GHz64MB120W9900X3Dとほぼ同等。編集だけなら価格面で有利動画編集中心
Ryzen 9 9950X3D16/325.7GHz128MB170WPremiere Proで9950Xを約5%、DaVinci Resolveで約4%上回る結果ありゲームとプロ向け動画編集
Ryzen 9 9950X16/325.7GHz64MB170W9950X3Dに近い高性能。ゲームをしないなら有力本格的な動画編集・エンコード

X3Dだから一律に動画編集が遅くなるわけではありません。

比較表を見ると、Ryzen 9000世代では、X3Dモデルが通常版より一律に遅いわけではないことが分かります。ただし、動画編集だけを目的にする場合は、X3Dの有無だけでなく、同じ予算で選べるコア数も比較する必要があります。

旧世代では、3D V-Cacheを搭載することによる発熱や動作クロックの制約があり、X3Dモデルが通常版より約5%遅くなるクリエイティブ系処理もありました。ところが、第2世代3D V-Cacheを採用するRyzen 9000 X3Dシリーズでは構造が変更され、キャッシュをCPUコアの下に配置することで、冷却しやすく高い動作クロックを維持できるようになっています。

現在は「X3Dだから遅い」というより、8コアのRyzen 7と、12~16コアのRyzen 9を比較することで差が生まれているケースが多いと考えたほうが正確です。

X3D付きRyzenと通常版Ryzenの違いはこちら

X3D CPUが動画編集に弱いといわれる理由

3D V-Cacheは主にゲームで効果を発揮する

X3D CPUには、大容量のL3キャッシュである「3D V-Cache」が搭載されています。

L3キャッシュは、CPUが頻繁に使用するデータを一時的に保管する場所です。作業机が広いほど必要な資料を机の上に置いておけるのと同じように、キャッシュが大きいほど、低速なメインメモリまでデータを取りに行く回数を減らせます。

ゲームでは、キャラクター・物理演算・描画命令などの細かなデータを繰り返し処理するため、大容量キャッシュが効果を発揮しやすくなります。

一方、動画編集では次のような複数のパーツを使用します。

  • CPUによる映像のデコードやエンコード
  • GPUによるエフェクト処理
  • GPU内の専用回路による動画処理
  • メモリへの素材やフレームの展開
  • SSDからの動画ファイルの読み込み

そのため、L3キャッシュを増やしても、すべての動画編集処理が速くなるわけではありません

同じ予算なら通常版Ryzenのほうがコア数を増やしやすい

引用元:Puget Systems「AMD Ryzen 7 9800X3D Content Creation Review」より

X3D CPUは、大容量キャッシュを搭載している分、通常版より価格が高くなる傾向があります。

たとえば、Ryzen 7 9800X3Dは8コア16スレッドです。動画編集だけを目的にする場合、価格差によっては12コア24スレッドのRyzen 9 9900Xを選べる可能性があります。

Puget Systemsの検証では、Ryzen 7 9800X3DはPremiere ProとDaVinci Resolveの両方で、Ryzen 7 9700XとRyzen 9 9900Xの中間に位置しています。動画編集性能が低いCPUではありませんが、動画編集だけで考えると、コア数の多いRyzen 9 9900Xのほうが価格性能比に優れるという評価です。

つまり、9800X3Dが動画編集で不利になる原因は、3D V-Cacheそのものよりも、同じ価格帯でコア数の多いCPUを選べることにあります。

旧世代のX3D CPUは動作クロックが低かった

初期のX3D CPUは、CPUコアの上側に3D V-Cacheを積層していました。

キャッシュがCPUコアとヒートスプレッダの間に入る構造だったため、CPUコアの熱を逃がしにくく、動作クロックや電圧を高く設定しにくいという問題がありました。

動画編集やエンコードでは、大容量キャッシュよりも動作クロックやコア数が重要になる処理があります。そのため、通常版よりクロックが低い旧世代X3D CPUでは、動画編集性能が少し低くなることがありました。

Ryzen 9000 X3DシリーズではキャッシュをCPUコアの下に配置する構造に変わり、この弱点が大幅に改善されています。

Ryzen 7 9800X3Dの動画編集性能

Ryzen 7 9800X3Dは、8コア16スレッド、最大ブーストクロック5.2GHz、96MBのL3キャッシュを搭載したCPUです。

動画編集性能は十分に高く、4K動画編集にも使用できます。

Puget Systemsの検証では、Premiere ProにおいてRyzen 7 9700Xを上回り、Ryzen 9 9900Xを下回る結果となっています。DaVinci Resolveでも同じように、9700Xと9900Xの中間に位置しています。

そのため、「9800X3Dは動画編集が遅い」という表現は正確ではありません。

ただし、動画編集のみを目的に9800X3Dを選ぶメリットはあまり大きくありません。予算が近ければ、コア数の多いRyzen 9 9900Xを選んだほうが、書き出しやCPU負荷の高い処理で有利になる可能性があります

9800X3Dが向いているのは、次のような人です。

  • ゲームを高フレームレートでプレイしたい
  • ゲーム実況動画も編集したい
  • ゲーム性能を落とさず動画編集も快適にしたい
  • Premiere ProやDaVinci Resolveを趣味・副業で使用する

ゲームが主目的で、動画編集も行うのであれば、9800X3Dは非常にバランスのよいCPUです。

Ryzen 9 9900X3Dの動画編集性能

引用元:Puget Systems「AMD Ryzen 9 9950X3D and 9900X3D Content Creation Review」より

Ryzen 9 9900X3Dは、12コア24スレッドを搭載した上位モデルです。

Ryzen 7 9800X3Dよりコア数が多いため、書き出し・エンコード・複数ソフトの同時使用などで有利になります。

Puget Systemsの検証では、Premiere ProにおけるRyzen 9 9900X3Dの性能は、通常版のRyzen 9 9900Xとほぼ同等でした。DaVinci Resolveでも両者の差は小さく、X3Dによる明確な性能低下は確認されていません。

つまり、Ryzen 9 9900X3Dは動画編集が遅いCPUではありませんが、動画編集だけでは通常版Ryzen 9 9900Xに対する大きな優位性もありません

価格差が大きい場合はRyzen 9 9900X、ゲーム性能も重視する場合はRyzen 9 9900X3Dが適しています。

Ryzen 9 9950X3Dの動画編集性能

Ryzen 9 9950X3Dは、16コア32スレッド、最大ブーストクロック5.7GHz、128MBのL3キャッシュを搭載しています。

Ryzen 7 9800X3Dとは異なり、動画編集用CPUとしても非常に高性能です。

Puget SystemsのPremiere Pro検証では、Ryzen 9 9950X3Dが通常版のRyzen 9 9950Xを総合スコアで約5%上回りました。LongGOPコーデックのテストでは約7%、DaVinci Resolveの総合スコアでは約4%上回っています。

通常版より必ず速くなるとは限りませんが、少なくともRyzen 9000世代では、X3Dによる動画編集性能の低下はほぼ解消されています。

Ryzen 9 9950X3Dは、次のような人に向いています。

  • 高性能なゲーミングPCで本格的な動画編集もしたい
  • 4K・8K動画を扱う
  • After EffectsやDaVinci ResolveのFusionも使用する
  • 動画編集をしながらゲームや別の処理を同時に動かす
  • ゲーム用PCと編集用PCを1台にまとめたい

動画編集とゲームの両方で高性能を求めるなら、Ryzen 9 9950X3Dは有力な選択肢です。

Ryzen 9 9950X3D2は動画編集向けなのか

Ryzen 9 9950X3D2 Dual Editionは、2つのCPUチップレットの両方に3D V-Cacheを搭載した16コア32スレッドCPUです。

L3キャッシュは192MB、L2キャッシュを含めた総キャッシュ容量は208MB、TDPは200Wとなっています。

AMDは、Ryzen 9 9950X3D2について、DaVinci ResolveやBlenderなどのクリエイター向け処理で、従来の9950X3Dから平均5~8%性能が向上すると説明しています。ただし、これはAMDによる公称値であり、使用ソフトや処理内容によって効果は異なります。

価格と消費電力が非常に高いため、一般的なYouTube動画編集のために選ぶCPUではありません。

ゲーム・動画編集・3DCG・ゲーム開発などを1台で行い、わずかな処理時間の短縮にも価値があるプロ向けのCPUです。

Premiere ProではX3DよりIntelがよい場合もある

Premiere Proでは、CPUの純粋な演算性能だけでなく、動画形式を処理するためのハードウェアデコーダーも重要です。

Intel CPUの内蔵GPUには「Quick Sync Video」が搭載されており、H.264やH.265/HEVCなど、一部のLongGOP形式を高速に処理できます。

Puget Systemsの検証では、GeForce RTX 50シリーズを使用することでAMD CPUとIntel CPUの差が縮まっています。一方、RTX 50シリーズを使用しない環境や、GPU側が対応していないHEVC形式を扱う場合は、Intel CPUが有利になるとされています

次のような動画を頻繁に編集する場合は、X3D CPUだけでなくIntel CPUも比較したほうがよいでしょう。

  • ミラーレスカメラで撮影したH.265 4:2:2 10bit動画
  • 長時間のH.264・H.265動画
  • プロキシを作らずにLongGOP素材を直接編集する
  • Premiere Proを中心に使用する

反対に、ProRes・DNxHRなどの中間コーデックや、GPU処理を多用する編集では、CPUメーカーによる差は小さくなる場合があります。

Premiere Pro向けPCの詳しい選び方はこちら

Core UltraとRyzenの動画編集性能を比較する

DaVinci ResolveではGPUを優先する

DaVinci Resolveは、Premiere ProよりGPUへの依存度が高い動画編集ソフトです。

カラーグレーディング・ノイズ除去・AI処理・GPUエフェクトでは、CPUをX3Dに変更するよりも、GPUの性能やVRAM容量を増やしたほうが効果的な場合があります。

実際にPuget Systemsの検証でも、DaVinci ResolveのGPUエフェクトとAI処理では、CPU間の性能差がほとんどありませんでした。一方、Fusionや一部の動画形式ではCPUによる差が発生しています。

限られた予算でDaVinci Resolve用PCを購入するなら、CPUだけを9950X3Dにするよりも、次のように予算を配分したほうがよいでしょう。

  1. 十分なVRAMを搭載したGPU
  2. 32GB以上のメモリ
  3. 編集素材用の高速SSD
  4. 8~16コアのCPU
  5. 高負荷時にも性能を維持できる冷却性能

X3D CPUは高性能ですが、GPUやメモリを削ってまで選ぶ必要はありません。

DaVinci Resolve向けPCの必要スペックはこちら

動画編集中心ならX3Dと通常版のどちらを選ぶべきか

ゲーム中心で動画編集もするならX3D

ゲームの割合が高い場合は、Ryzen 7 9800X3DやRyzen 9 9900X3Dが適しています。

Ryzen 7 9800X3Dでも一般的な4K動画編集には十分な性能があります。ゲーム実況・切り抜き動画・YouTube動画などを制作する用途で、動画編集性能が大きな問題になる可能性は低いでしょう。

ゲームと動画編集を同程度に行うならRyzen 9 X3D

ゲームと動画編集の両方を本格的に行うなら、Ryzen 9 9900X3DまたはRyzen 9 9950X3Dが適しています。

特にRyzen 9 9950X3Dは16コアを搭載しているため、動画編集でも通常版に近い、あるいは上回る性能を発揮します。

動画編集が中心なら通常版Ryzenも比較する

ゲームをほとんどしない場合は、X3Dに追加予算をかけるメリットが小さくなります。

通常版のRyzen 9 9900Xや9950Xを選び、浮いた予算をGPU・メモリ・SSDに回したほうが、パソコン全体の動画編集性能を高められる可能性があります。

Premiere ProでH.264やHEVC素材を多用する場合は、Intel CPUも候補に入ります。

X3D CPUを選ばないほうがよい人

次の条件に当てはまる場合は、X3D CPUを優先する必要はありません。

  • パソコンでほとんどゲームをしない
  • 動画の書き出し時間をできるだけ短縮したい
  • 同じ予算でコア数の多いCPUを選べる
  • Premiere ProでHEVC 4:2:2 10bit素材を多用する
  • CPUよりGPUやメモリが不足している
  • 予算を抑えた動画編集PCを購入したい

X3D CPUはゲーム性能に対して追加費用を支払う製品です。そのゲーム性能を活用しない場合は、通常版CPUのほうが合理的です。

X3D CPUが向いている人

次のような用途ではX3D CPUが適しています。

  • ゲームと動画編集を1台のパソコンで行う
  • ゲーム実況や配信動画を制作する
  • 高フレームレートでゲームをプレイする
  • 動画編集だけでなくゲーム開発も行う
  • ゲーム性能を妥協せずクリエイティブ用途にも使いたい

特にRyzen 9 9950X3Dは、「ゲーム用CPU」ではなく、ゲームとクリエイティブ制作の両方に対応できる総合性能の高いCPUと考えられます。

まとめ

X3D CPUは、必ずしも動画編集が遅いわけではありません。

旧世代のX3D CPUでは、通常版より動作クロックが低く、動画編集やレンダリングで不利になることがありました。しかし、第2世代3D V-Cacheを採用したRyzen 9000 X3Dシリーズでは、この弱点が大幅に改善されています。

Ryzen 7 9800X3Dは、動画編集性能自体は十分ですが、動画編集だけならコア数の多いRyzen 9 9900Xのほうが適している場合があります。

一方、Ryzen 9 9950X3Dは16コアを搭載しており、Premiere ProやDaVinci Resolveでも通常版9950Xと同等以上の性能を発揮することがあります。

CPUを選ぶときは、「X3Dかどうか」だけで判断するのではなく、次の基準で選びましょう。

  • ゲーム中心:Ryzen 7 9800X3D
  • ゲームと編集を両立:Ryzen 9 9900X3D
  • ゲームと本格的な編集:Ryzen 9 9950X3D
  • 動画編集中心:Ryzen 9 9900X・9950Xも比較
  • Premiere ProでLongGOP素材中心:Intel CPUも比較
  • DaVinci Resolve中心:CPUだけでなくGPUを優先

X3D CPUは動画編集ができないCPUではなく、ゲーム性能にも予算を使った高性能CPUです。

動画編集だけを行うなら通常版の価格性能比が有利ですが、ゲームと動画編集を1台で行う場合は、X3D CPUが非常に有力な選択肢になります。

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