X3D CPUは動画編集が遅い?通常版Ryzenとの違いを解説
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最終更新日:2026年9月10日
Ryzenの「X3D」シリーズは、ゲーム性能の高さで人気があるCPUです。ただ、動画編集用のパソコンを探していると、「X3Dは動画編集が遅い」「クリエイティブ用途には向いていない」といった意見を見かけることがあります。
現行世代のX3D CPUだからといって、動画編集が極端に遅くなるわけではありません。
特にRyzen 9000シリーズでは、X3Dによる動作クロックの低下が抑えられています。Ryzen 9 9950X3Dのように、動画編集で通常版より高い性能を示すモデルもあります。
ただし、Ryzen 7 9800X3Dのような8コアモデルは、同価格帯の12コアCPUと比べると動画編集性能で不利になることがあります。動画編集が主な目的なら、X3Dの有無よりも、コア数・GPU・使用する動画形式を優先して選ぶべきです。
X3D CPUは動画編集が遅いのか

主要なX3D CPUと通常版を比べると、動画編集での違いが分かりやすくなります。
| 比較するCPU | コア/スレッド | 最大クロック | L3キャッシュ | TDP | 動画編集性能の傾向 | 適した用途 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| Ryzen 7 9800X3D | 8/16 | 5.2GHz | 96MB | 120W | 9700Xより高性能だが、12コアの9900Xには及ばない | ゲーム中心+動画編集 |
| Ryzen 7 9700X | 8/16 | 5.5GHz | 32MB | 65W | 9800X3Dよりやや低いが、安価・低消費電力 | 軽~中程度の動画編集 |
| Ryzen 9 9900X3D | 12/24 | 5.5GHz | 128MB | 120W | Premiere Proでは9900Xとほぼ同等 | ゲームと本格的な動画編集 |
| Ryzen 9 9900X | 12/24 | 5.6GHz | 64MB | 120W | 9900X3Dとほぼ同等。編集だけなら価格面で有利 | 動画編集中心 |
| Ryzen 9 9950X3D | 16/32 | 5.7GHz | 128MB | 170W | Premiere Proで9950Xを約5%、DaVinci Resolveで約4%上回る結果あり | ゲームとプロ向け動画編集 |
| Ryzen 9 9950X | 16/32 | 5.7GHz | 64MB | 170W | 9950X3Dに近い高性能。ゲームをしないなら有力 | 本格的な動画編集・エンコード |
X3Dだからといって、動画編集が必ず遅くなるわけではありません。
比較表を見ると、Ryzen 9000世代のX3Dモデルが通常版より一律に遅いわけではありません。動画編集だけが目的なら、X3Dの有無だけでなく、同じ予算で何コアのCPUを選べるかも比べる必要があります。
旧世代のX3D CPUは、3D V-Cacheによる発熱や動作クロックの制約がありました。そのため、クリエイティブ系の処理では通常版より約5%遅くなるケースもありました。第2世代3D V-Cacheを採用したRyzen 9000 X3Dシリーズでは、構造が変わっています。キャッシュをCPUコアの下に配置したことで冷却しやすくなり、高い動作クロックを保ちやすくなりました。
現在の性能差の多くは、X3Dの有無よりも、8コアのRyzen 7と12~16コアのRyzen 9を比較していることで生じていると見るほうが正確です。
X3D付きRyzenと通常版Ryzenの違いはこちら
X3D CPUが動画編集に弱いといわれる理由
3D V-Cacheは主にゲームで効果を発揮する
X3D CPUには、大容量のL3キャッシュである「3D V-Cache」が搭載されています。
L3キャッシュは、CPUがよく使うデータを一時的に置いておく場所です。広い作業机なら、必要な資料を手元に置いておけます。それと同じで、キャッシュが大きいほど、メインメモリからデータを読み出す回数を減らせます。
ゲームでは、キャラクター・物理演算・描画命令などの細かなデータを繰り返し処理します。そのため、大容量キャッシュの効果が出やすくなります。
一方、動画編集では、次のように複数のパーツが処理を分担します。
- CPUによる映像のデコードやエンコード
- GPUによるエフェクト処理
- GPU内の専用回路による動画処理
- メモリへの素材やフレームの展開
- SSDからの動画ファイルの読み込み
そのため、L3キャッシュを増やしても、すべての動画編集処理が速くなるわけではありません。
同じ予算なら通常版Ryzenのほうがコア数を増やしやすい

X3D CPUは大容量キャッシュを搭載しているため、通常版より価格が高くなる傾向があります。
たとえば、Ryzen 7 9800X3Dは8コア16スレッドです。動画編集だけが目的なら、価格差によっては12コア24スレッドのRyzen 9 9900Xを選べる場合があります。
Puget Systemsの検証では、Ryzen 7 9800X3DはPremiere ProとDaVinci Resolveの両方で、Ryzen 7 9700XとRyzen 9 9900Xの中間に位置しています。動画編集性能が低いCPUではありません。ただし動画編集だけで比べると、コア数が多いRyzen 9 9900Xのほうが価格性能比に優れると評価されています。
9800X3Dが動画編集で不利になりやすい理由は、3D V-Cacheそのものではありません。同じ価格帯で、よりコア数の多いCPUを選べることが大きな理由です。
旧世代のX3D CPUは動作クロックが低かった
初期のX3D CPUは、CPUコアの上側に3D V-Cacheを積み重ねていました。
キャッシュがCPUコアとヒートスプレッダの間に入る構造でした。そのためCPUコアの熱を逃がしにくく、動作クロックや電圧を高く設定しにくいという制約がありました。
動画編集やエンコードには、大容量キャッシュよりも動作クロックやコア数が効きやすい処理があります。そのため、通常版よりクロックが低い旧世代X3D CPUでは、動画編集性能がやや低くなることがありました。
Ryzen 9000 X3DシリーズではキャッシュをCPUコアの下に配置する構造に変わり、この弱点が大幅に改善されています。
Ryzen 7 9800X3Dの動画編集性能
Ryzen 7 9800X3Dは、8コア16スレッド、最大ブーストクロック5.2GHz、96MBのL3キャッシュを搭載したCPUです。
動画編集性能は十分に高く、4K動画編集にも問題なく使えます。
Puget Systemsの検証では、Premiere ProでRyzen 7 9700Xを上回り、Ryzen 9 9900Xを下回りました。DaVinci Resolveでも同じように、9700Xと9900Xの中間に位置しています。
この結果を見ると、「9800X3Dは動画編集が遅い」という表現は正確ではありません。
ただし、動画編集だけのために9800X3Dを選ぶメリットはあまり大きくありません。予算が近ければ、コア数の多いRyzen 9 9900Xを選んだほうが、書き出しやCPU負荷の高い処理で有利になる可能性があります。
9800X3Dが向いているのは、次のような人です。
- ゲームを高フレームレートでプレイしたい
- ゲーム実況動画も編集したい
- ゲーム性能を落とさず動画編集も快適にしたい
- Premiere ProやDaVinci Resolveを趣味・副業で使用する
ゲームが主目的で、動画編集もするなら、9800X3DはバランスのよいCPUです。
Ryzen 9 9900X3Dの動画編集性能

Ryzen 9 9900X3Dは、12コア24スレッドを搭載した上位モデルです。
Ryzen 7 9800X3Dよりコア数が多いため、書き出しやエンコード、複数ソフトの同時使用などで有利です。
Puget Systemsの検証では、Premiere ProでのRyzen 9 9900X3Dの性能は、通常版のRyzen 9 9900Xとほぼ同等でした。DaVinci Resolveでも差は小さく、X3Dによる明らかな性能低下は確認されていません。
Ryzen 9 9900X3Dは動画編集が遅いCPUではありません。ただし動画編集だけで比べると、通常版Ryzen 9 9900Xに対する大きな優位性もありません。
価格差が大きいならRyzen 9 9900X、ゲーム性能も重視するならRyzen 9 9900X3Dが適しています。
Ryzen 9 9950X3Dの動画編集性能
Ryzen 9 9950X3Dは、16コア32スレッド、最大ブーストクロック5.7GHz、128MBのL3キャッシュを搭載しています。
16コアを搭載しているため、動画編集用CPUとしても高い性能があります。
Puget SystemsのPremiere Pro検証では、Ryzen 9 9950X3Dが通常版のRyzen 9 9950Xを総合スコアで約5%上回りました。LongGOPコーデックでは約7%、DaVinci Resolveの総合スコアでは約4%上回っています。
通常版より必ず速くなるわけではありません。ただ、少なくともRyzen 9000世代では、X3Dによる動画編集性能の低下はほぼ解消されています。
Ryzen 9 9950X3Dは、次のような人に向いています。
- 高性能なゲーミングPCで本格的な動画編集もしたい
- 4K・8K動画を扱う
- After EffectsやDaVinci ResolveのFusionも使用する
- 動画編集をしながらゲームや別の処理を同時に動かす
- ゲーム用PCと編集用PCを1台にまとめたい
動画編集とゲームの両方で高い性能を求めるなら、Ryzen 9 9950X3Dは有力な選択肢です。
Ryzen 9 9950X3D2は動画編集向けなのか
Ryzen 9 9950X3D2 Dual Editionは、2つのCPUチップレットの両方に3D V-Cacheを搭載した16コア32スレッドCPUです。
L3キャッシュは192MBです。L2キャッシュを含めた総キャッシュ容量は208MB、TDPは200Wです。
AMDは、Ryzen 9 9950X3D2について、DaVinci ResolveやBlenderなどのクリエイター向け処理で、従来の9950X3Dより平均5~8%性能が上がると説明しています。ただし、これはAMDによる公称値です。使うソフトや処理内容によって効果は変わります。
価格と消費電力が非常に高いため、一般的なYouTube動画の編集だけを目的に選ぶCPUではありません。
ゲーム・動画編集・3DCG・ゲーム開発などを1台で行い、わずかな処理時間の短縮にも価値があるプロ向けのCPUです。
Premiere ProではX3DよりIntelがよい場合もある
Premiere Proでは、CPU自体の処理性能だけでなく、動画形式を処理するハードウェアデコーダーも重要です。
Intel CPUの内蔵GPUには「Quick Sync Video」が搭載されています。H.264やH.265/HEVCなど、一部のLongGOP形式を高速に処理できます。
Puget Systemsの検証では、GeForce RTX 50シリーズを使うと、AMD CPUとIntel CPUの差が小さくなります。RTX 50シリーズを使用しない環境や、GPU側が対応していないHEVC形式を扱う場合は、Intel CPUが有利になるとされています。
次のような動画をよく編集するなら、X3D CPUだけに絞らず、Intel CPUも比べておくとよいでしょう。
- ミラーレスカメラで撮影したH.265 4:2:2 10bit動画
- 長時間のH.264・H.265動画
- プロキシを作らずにLongGOP素材を直接編集する
- Premiere Proを中心に使用する
ProRes・DNxHRなどの中間コーデックや、GPUを多く使う編集では、CPUメーカーによる差が小さくなる場合があります。
Premiere Pro向けPCの詳しい選び方はこちら
Core UltraとRyzenの動画編集性能を比較する
DaVinci ResolveではGPUを優先する
DaVinci Resolveは、Premiere ProよりGPUへの依存度が高い動画編集ソフトです。
カラーグレーディング・ノイズ除去・AI処理・GPUエフェクトでは、CPUをX3Dに変えるよりも、GPU性能やVRAM容量を増やしたほうが効果的な場合があります。
Puget Systemsの検証でも、DaVinci ResolveのGPUエフェクトとAI処理では、CPUによる性能差がほとんどありませんでした。ただし、Fusionや一部の動画形式ではCPUによる差が出ています。
予算が限られている状態でDaVinci Resolve用PCを買うなら、CPUだけに予算をかけて9950X3Dを選ぶ必要はありません。次のように予算を配分したほうがよいでしょう。
- 十分なVRAMを搭載したGPU
- 32GB以上のメモリ
- 編集素材用の高速SSD
- 8~16コアのCPU
- 高負荷時にも性能を維持できる冷却性能
X3D CPUは高性能ですが、GPUやメモリを削ってまで選ぶ必要はありません。
DaVinci Resolve向けPCの必要スペックはこちら
動画編集中心ならX3Dと通常版のどちらを選ぶべきか
ゲーム中心で動画編集もするならX3D
ゲームの割合が高い場合は、Ryzen 7 9800X3DやRyzen 9 9900X3Dが適しています。
Ryzen 7 9800X3Dでも、一般的な4K動画編集には十分な性能があります。ゲーム実況・切り抜き動画・YouTube動画などの制作なら、動画編集性能が足を引っ張る場面は少ないでしょう。
ゲームと動画編集を同程度に行うならRyzen 9 X3D
ゲームと動画編集の両方を本格的に行うなら、Ryzen 9 9900X3DまたはRyzen 9 9950X3Dが適しています。
特にRyzen 9 9950X3Dは16コアを搭載しています。そのため、動画編集でも通常版に匹敵し、処理によっては上回る性能を発揮します。
動画編集が中心なら通常版Ryzenも比較する
ゲームをほとんどしない場合は、X3Dに追加予算をかけるメリットが小さくなります。
通常版のRyzen 9 9900Xや9950Xを選び、浮いた予算をGPU・メモリ・SSDに回す方法もあります。そのほうが、パソコン全体の動画編集性能を高められる可能性があります。
Premiere ProでH.264やHEVC素材を多く使う場合は、Intel CPUも候補に入ります。
X3D CPUを選ばないほうがよい人
次の条件に当てはまるなら、X3D CPUを優先する必要はありません。
- パソコンでほとんどゲームをしない
- 動画の書き出し時間をできるだけ短縮したい
- 同じ予算でコア数の多いCPUを選べる
- Premiere ProでHEVC 4:2:2 10bit素材を多用する
- CPUよりGPUやメモリが不足している
- 予算を抑えた動画編集PCを購入したい
X3D CPUの価格には、高いゲーム性能の分も含まれています。そのゲーム性能を使わない場合は、通常版CPUのほうが合理的です。
X3D CPUが向いている人
次のような用途では、X3D CPUが適しています。
- ゲームと動画編集を1台のパソコンで行う
- ゲーム実況や配信動画を制作する
- 高フレームレートでゲームをプレイする
- 動画編集だけでなくゲーム開発も行う
- ゲーム性能を妥協せずクリエイティブ用途にも使いたい
特にRyzen 9 9950X3Dは、ゲーム性能とクリエイティブ性能を高い水準で両立できるCPUです。
まとめ
X3D CPUだからといって、動画編集が必ず遅くなるわけではありません。
旧世代のX3D CPUは、通常版より動作クロックが低いモデルがありました。そのため、動画編集やレンダリングで不利になることがありました。一方、第2世代3D V-Cacheを採用したRyzen 9000 X3Dシリーズでは、この弱点が大幅に改善されています。
Ryzen 7 9800X3Dは、動画編集性能そのものは十分に高いCPUです。ただし動画編集だけなら、コア数の多いRyzen 9 9900Xのほうが適している場合があります。
一方、Ryzen 9 9950X3Dは16コアを搭載しています。Premiere ProやDaVinci Resolveでも、通常版9950Xと同等以上の性能を発揮することがあります。
CPUを選ぶときは、「X3Dかどうか」だけで決めず、次の基準で比べましょう。
- ゲーム中心:Ryzen 7 9800X3D
- ゲームと編集を両立:Ryzen 9 9900X3D
- ゲームと本格的な編集:Ryzen 9 9950X3D
- 動画編集中心:Ryzen 9 9900X・9950Xも比較
- Premiere ProでLongGOP素材中心:Intel CPUも比較
- DaVinci Resolve中心:CPUだけでなくGPUを優先
X3D CPUは、動画編集に向いていないCPUではありません。ゲーム性能にもコストをかけた、高性能なCPUです。
動画編集だけを行うなら通常版の価格性能比が有利です。一方、ゲームと動画編集を1台で行うなら、X3D CPUが有力な選択肢になります。
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